前回の更新から1年以上も経っていることに驚きつつも、今年は自分の中ではレトロPCゲームへの熱が燃え上がった1年だと感じています。
一昨年あたりから、歳をとったせいか若い頃に触っていたレトロPCゲームの時代に強い興味が湧き上がってきて、PC-6001ユーザーの投稿ゲームなどがネットを通して手軽に遊べるようになっていたこともあり、自分の中でレトロPCゲーム熱がジワジワと湧き上がっていたのですが、そこにPC-8001miniが発表されたことで自分の心の中のレトロPCブームが再燃した気がします。
PC-8001自体は触ったことすら無く名前しか知らなかったのですが、逆にそれが好奇心を刺激して興味が出てきたこともあり、購入してみたいという気持ちが強くなっていたので、発売前から情報を調べつつ注目をしていました。
しかし、いざ商品発表されると、NECの高級ノートPCとの抱合せ販売という内容に物凄くガッカリさせられました。
後にPCGユニット付きの商品が単品販売されることとなり再び興味が湧いてきましたが、2万7280円という高額な価格設定にまたしても気持ちが萎えてきました・・・
しかし、ソフトウェアラインナップが全て発表されると、かつてベーマガ等で見かけたパソコン黎明期のゲームソフトが多く並んでいて、初めて聞く「ノンバーラパニック」というPCG機能を使った面白そうなゲームもあって目を惹かれました。
X1でPCG機能に慣れ親しんだものの、PC-8001向けの外付けPCG機能への興味も湧いてきて、これはもう購入するしか無い!というところまで気持ちは傾いていました・・・
ところが詳細を調べていくと、この製品には強固なプロテクトがかかっているようで、ゲームイメージをPC側で利用することは出来ない仕組みになっていると知って、急に購入意欲が萎んでしまいます。
別にゲームを手に入れてネットでばらまくつもりは無いですし、合法的に買ったゲームのイメージをPC上からも利用できるようにして、CatShanty上からも起動できるようにして遊んでみたかっただけなんですが、収録ゲームのファイルにアクセスしようとすると強制リセットがかかるとネットの記事に書いてあって、購入したユーザーの利便性を犠牲にしてまで権利保護するという部分に共感できず、購入する気持ちが無くなってしまいました。
それでも、一度火がついたレトロPCゲームへの好奇心は収まらず、PC-8001の情報を探している時に知ったASCIIのムック「みんながコレで燃えた!PC-8001・PC-6001」の存在を知り、既に発売は終了していましたが、オークションサイトで中古品があったので入手し、PC-8001miniにも収録されている「ORION-80」などを遊ぶことが出来ました。
そこから、PC-6001の市販アドベンチャーゲーム「コロニーオデッセイ」の存在も知り、当時としてはかなりクオリティーの高いセンスの良いグラフィックスに驚かされました。
PC-6001のグラフィックスは非常に暖かみがあって、CPU性能とグラフィックス性能のバランスが良いせいか、ゲームもスムーズに動いて遊びやすい作品が多いように感じます。
昔の国産8bitPCで繰り広げられた性能競争の中では遅れをとり、NEC社内の思惑もあって時代の流れに飲み込まれ消えていってしまいましたが、まさに和製AppleIIと言われるだけのことはある味のある画素の滲みを利用するグラフィックスや、低解像度ゆえにセンスで勝負しているゲームの豊富さに感動させられっぱなしで、本当に素晴らしい名機種だったんだな・・・と感慨に浸らせてもらいました。
そんな感じで情報を検索していくと、Google先生やYoutubeは似たような趣向の情報をどんどんオススメしてきてくれるので、知らぬ間にディープな世界が見えてきてしまうもので、気付いた時には昔のベーマガやI/O等に掲載されていたゲームを21世紀の時代に入力して楽しんでいる人たちの存在に出会ってしまいました・・・
こんな世界もあるんだ!という驚きと共に、かつては私も膨大なダンプリストを見ながら数週間かけてX1用のS-OSを入力したことを思い出し、懐かしい気持ちになったものの、さすがに今の時代にあの頃の作業をするとか無理だよなーと思ったのでした。
と・こ・ろ・が・・・なんと、今どきのダンプリスト入力の方法を知って目からウロコが落ちました・・・
掲載誌のリストをOCRソフトでスキャンして、ほぼ自動でダンプリストを入力して、最後に人間がチェックサムのミス部分を調べて誤入力を直すだけなのです!
なるほどなーと感心しつつも、そこから入力したデーターをレトロPC実機に転送して、実機のテープメディアに保存してから、更にイメージ化する作業が必要だろうから大変そうだし自分には無理だよなーと思っていたら、驚いたことにWindows上でダンプリストやBASICプログラムを入力して、そのまま各機種のテープイメージに変換してくれるソフトウェアまでありました!
DumpListEditorというソフトなんですが、その発想には本当に驚かされてしまいました・・・こんなことが出来るのか!という驚きと、その完成度の高さにビックリさせられました。BASICプログラムなどは、ちゃんとBASICコマンドを中間言語コードに変換して保存しているようで、ここまで解析しているのか・・・と感心しました。
対応機種も多種多様で、PC-6001やPC-8001、MZ系やMSXなど、ベーマガ資産の多そうな機種が網羅されていて大変素晴らしいです。
このソフトの存在を知ってからは、雑誌投稿ゲームの情報も調べるようになり、特にI/Oに掲載されていた初期のT&Eソフトの作品群に心惹かれました。
また、PC-8001miniに収録されていたゲームの多くが雑誌掲載された作品でしたので、ゲームをPCで遊びたいなら、掲載された雑誌があれば遊ぶことが出来ることを知り、俄然興味が出てきて情報を探す毎日が始まりました・・・
そして遂に、I/O1982年12月号に掲載された「ピラミッド」を自らの手で入力して遊ぶことが出来るようになりました!
当初はダンプリストのスキャンする解像度が低すぎて、まともに認識がされずに手作業で直す部分が半分以上を占める酷い状態でしたが、再度600dpiでスキャンし直してダンプリスト専用に作られたOCRソフトを使うことで98%以上の認識率となって、ほとんど手直しすること無く入力を終えることが出来ました。
初めて動かす時は本当に動くのか?とドキドキでしたが、本当にデモ画面が動き始めた時は、パソコンを買ったばかりの頃にベーマガの投稿プログラムを初めて入力して、SyntaxErrorを何度も出しながら修正を繰り返し、苦労して初めてゲームが動き出した時の感動が蘇ってきて大興奮してしまいました!
しかし、そう簡単にはいかないもので、遊んでみるとバグが発生していて、マップの一部がブルブル震えていて、そのヒズミに敵が引っかかって動けなくなっていました。その引っかかった敵の奥にステージの鍵があるので、まったくクリアが出来ない状態という悲しい結果に・・・
ダンプリストのチェックサムにミスは無いので、もしかすると雑誌掲載時にミスがあって、後の号で訂正記事が出ているのでは?と疑心暗鬼になってしまいましたが、同じゲームを入力した方の情報をなどを見ると正常に入力できていると書かれているのを見つけ、残るはBASICリスト側の問題かと思い、1文字1文字たんねんにリストとデーターを見比べていくと、最後の最後に書かれたDATA分の中の数値が「00」のところが「0D」に誤認識されているのを見つけ、そこを修正してテープイメージを作り直したら無事にゲームが遊べるようになりました!
スキャンや入力自体は1~2日程度で終わったんですが、バグを特定するまでに悩んだり放置したり諦めたりを繰り返し、気づけば1ヶ月以上もの期間かかってしまいました。
ちなみに、この作品はMSXにも移植されたようで、「ピラミッド・ワープ」という名前で販売されていたようです。今もProjectEGGで購入することが出来ます。
元は、コナミが制作したアーケード版「ツタンカーム」にインスパイアされたゲームだったようで、I/Oに掲載された記事内にも「ゲームセンターで面白いゲームを見つけて遊びまくってしまったので作ってみた・・・」みたいなことが書かれていて、著作権に対する意識がおおらかな時代だったんだなーと感じました。
また、海外でも根強いファンがいるようで、MSX2へ勝手移植された「
ピラミッド・ワープ Enhanced Plus 」が公開されていて遊ぶことが出来ます。
キャラクターが可愛らしくなって、とても楽しい感じになっています。海外のMSXファンサイトでは、今も精力的に新作ゲームが作られていて、そのレトロゲーム愛のパワーに驚かされます。
デザインセンスも日本文化をどんどん吸収した上で、海外のセンスの良さが上手くミックスして凄く魅力的な作品に昇華しているところが素晴らしいです。
そして、ダンプリストの入力に成功したことに気を良くして、次々とT&Eソフトの初期の投稿作品を入力し続けてしまいました。
真っ二つに割れたビルをジャンプして登っていく「タワーパニック」で、I/O 1982年9月号に掲載されたゲームです。
こちらは入力後に一発で動いて感動しました。ゲームはジャンプ制御が難しくて難易度高めです。パックマンの敵が出てきますが・・・大丈夫なんだろうか?と今更ながら心配してしまいます。
こちらは、I/O 1982年8月号に掲載されていた「マリンシューター」という海洋シューティングゲームで、ついこの間アーケードアーカイブスでも発売されていた「シーファイターポセイドン」というアーケードゲームにインスパイアされたゲームなんじゃないかと思ったのですが、なんと!こちらのほうが先に発表されていました。動きが滑らかで遊んでいて楽しいです。
I/O 1982年8月号に掲載されていた「ミサイルファントム」というシューティングゲームです。
かなり敵の攻撃が激しくて今遊んでも手に汗握ります。当時は、かなり人気のあった作品のようで、他機種への移植も数多く行われていたようです。
そんな感じで、数多くのプログラムをOCRソフトを利用して入力出来るようになり自信を深めたので、遂にPC-8001のゲームにも挑戦を始め、一番気になっていた「ノンバーラパニック」の入力を行ってみました。
こちらは、かなりの量のダンプリストでしたが、今までの経験上BASICリストが無いほうが誤入力は発生しにくいという事に気付いていたので、結果的に一発で起動してくれました!
ただ、ゲームをしているとBGMに高周波音が交じるのと、動画サイトでこのゲームのプレイ動画を見ると、微妙にBGMが少し違うような気もするので、何か入力ミスがあるんじゃないかとモヤモヤした気分になっています・・・
他にもPC-8001のPCG機能を使った「サーキット」というゲームも入力しました。結構本格的なレースゲームで良く出来てるなーと感心させられる内容です。
この当時の I/Oは、掲載プログラムをカセットサービスで売ったりしていたようですが、後に優れたゲームは「コムパック」ブランドとしてパッケージ販売されるようになり、私も「ウットイ」や「ホバーアタック」、特に「ラグランジェL-2」は随分と熱心に遊ばせてもらいました。
自分がX1でゲームを遊んでいた1984年頃は、「I/O」という雑誌は書店で良く見かけていましたが、怒涛のダンプリストが掲載される難易度高い雑誌という印象で、気になる記事がある時に立ち読みしたり買ったりする程度で、既に市販ソフトも多く発売されていた時代なので、投稿ゲームのダンプリストには目もくれなかったように思います。
しかし、今あらためて投稿作品に触れてみると、当時プログラミング技術に自信のある人達は、誌面を通じてゲーム作りの腕を競い、プログラミング技術に自信が無くても、ゲームのアイディアを創意工夫して挑むなど、当時の私が知らないところで、多くの人達が試行錯誤しながら切磋琢磨していたんだなーとゲームの歴史の一端を知ることが出来て、大変に感慨深いものがこみ上げてきます。
もちろん、今もSteamなどで最新のゲームも遊ぶのですが、自分が生きた時代と共に、国産ゲームの黎明期を作り上げてきた名前も知られていないゲーム達の歴史を追体験することは、実に儚くも愛おしい魅力的な情景を見ることが出来て、今の時代だからこそ遊ぶことに価値を感じるのです。
もともと、自分自身が天邪鬼な性格というのもあると思うのですが、流行を追うのが嫌いで、普通の人は気に留めないような世界を見てしまうと、無性に引き込まれてしまう性分なんだと思います。
選ばれた人だけが理解できる、自己満足な世界を求めているだけなのかもしれませんが・・・それでも歳をとってくると、こういう自己満足な趣味に浸るのがたまらなく楽しいんですよね・・・
本当に今年は、レトロPCゲームに没頭していた年だったと思います。